雲菫目当てで原神始めた結果がこれだよ!!!!!
雲菫かわいい!!!!!!!!!!!!!!!!!(挨拶)
というわけで今年9月で二周年となるRPG「原神」を始めてみたよという話です。
ぱっつんストレートの衝撃
最初は、Twitterに流れてきた原神のファンアートだった。
原神といえば「モナ」というキャラのイラストがよく流れてくるが、その日流れてきたのは全く違ったイラストだった。
それは「雲菫」というキャラのイラストだった。
#yunjin #Genshin #GenshinImapct pic.twitter.com/fOzdLjtI7U
— 绝对值 (@Sing_Twilight) January 3, 2022
オリエンタルなのにどことなくロリータな服装。妖艶な深いアイシャドウ。そしてぱっつんストレートロング。
えっこんなキャラデザの子いるの?
衝撃だった。元々この手のストレートロングヘアキャラに目が無い性分ではあるが、この子のデザインはとても魅力的に映った。
原神は「下半身を覆うものがタイツしかない世界」くらいに認識していたが、そんなことはなかった。こんなにも優雅なキャラデザの子がいたのか!
さっそく詳細を調べた。
まずは名前だ。雲に菫(すみれ)と書いて雲菫……なんて優雅な名前なんだ。
読みは「うんきん」と読む。日本語的にはあんまり優雅な響きではないな……。
ちなみに海外版では(おそらく中国語読みの)「Yunjin」で呼ばれている。そっちの方が良くないか。
次にキャラ設定だ。公式サイトのキャラクター紹介を見ると、次のようにある。
「雲翰社」の現座長であり、演技と創作の二つの才を持つ璃月劇の看板役者。雲菫の演じる姿は優雅でたおやかであり、まるで彼女の風格を表しているかのようである。*1
なるほどわからん。まず「雲翰社」「璃月」が読めない。りげつ……?
しかし役者だということはわかった。それなら地雷系メイクに両足突っ込んでるような深いアイシャドウにも説明がつく。「璃月劇」というのも、きっとおめかしして演じるような劇なんだろう。ファンタジー世界の劇なんだから。
そうだね。AI歌声合成エンジン「NEUTRINO」のライブラリの一人、「No.7」の中の人だね。
AI歌声合成を世に知らしめた「AIきりたん」のエンジンであるNEUTRINO。その歌声ライブラリを作るために、小岩井ことりは自ら作詞・作曲・歌唱をこなし、50曲もの歌唱データを提供したという。*3
いち声優の活動範囲を越えたこの行動力はクリエイターとして尊敬に値する。
閑話休題。
そんな予習が終わったところで、もう頭の中は雲菫のことで一杯だった。ついでに、原神のことを調べてしまったせいかTwitterのプロモーションも原神ばかり流れてくるようになってしまった。
こうなるともうダメだ。己の性癖を信じ、原神をインストールすることにした。
ブランニューワールド最高かよ
冒険に満ちたブランニューワールドへ。
ブランニューワールドの意味はよくわからないが、グラフィックはとても綺麗だ。PCのスペックがそこまで要求されないのもありがたい。そのままでも動くが、少し設定を下げると快適に動作した。
原神の一つ目の魅力は、キャラクターデザインだろう。
ファンタジー世界なのに衣装がぜんぜんファンタジーじゃないゲームも多々ある昨今、原神のキャラデザはしっかりとファンタジーしている。現実離れしているが、奇抜ではない……という、巧いラインだ。
何と言っても、顔の良い男と顔の良い女しかいない。誰だってモブ顔がイキってドラゴンを倒すシーンよりも、イケメンと美少女が山菜を採取している姿の方が見たいに決まってる。昔、某アニメ監督は美少女だらけのアニメを指して「美少女動物園」と揶揄したそうだが、動物園上等。美男美女が揃えばブランニューワールドである(意味不明)
二つ目の魅力は操作がシンプルなこと。アーマードコアのような千錯万綜な操作から離れて久しい老体なので大変助かる。
というか、操作感が(直近で遊んだアクションゲームの)エルシャダイとほぼ同じだった。ゲームスピードが近いこともあるが、アクションの感覚も似ている。
RBボタンでダッシュする主人公が「ガーレ」を装備したイーノックに見えてならない。ジャンプボタン押しっぱなしで滑空する姿は「アーチ」の滞空アクションを彷彿とさせる。まぁ、いい奴だったよ。
三つ目の魅力は、ストーリーの展開が丁寧なところ。
固有名詞が序盤から大量に出てくるゲームはうんざりするが、原神はそこまで複雑ではなさそう。個人的には、訳わかんねぇ用語を一方的に喋ってきて会話が成立しないキャラがいないところがストレスフリーで良い。
お目当ての雲菫は?
ゲームは良い、よくわかった。
ではそろそろお目当ての雲菫を……となると、ガチャの話は避けて通れない。
原神のガチャには、初心者が注意しなければならない点が三つある。
一つ目は、ガチャの中にキャラクターと武器が一緒にぶち込まれているところ。排出されるのはほぼ武器である。
二つ目は、初心者だからといってたくさん引かせてくれる訳ではないということ。一応、初心者には「初心者応援祈願」という20連限定の初心者向けガチャがある。だが石自体は、アチーブメントの達成などで地道に集めるしかないようだ。
最初は達成できる任務が多いので比較的石が集まりやすいのだろうが、それでもある程度ゲームを進めないと10連には程遠い。
三つ目は、(ガチャの問題というより育成の問題だが)最近追加されたキャラは初心者向けでないという罠。原神はレベル上限を引き上げる「突破」というシステムがあり、突破用のアイテムを集めないと一定レベルから先に行けないシステムになっている。が、Ver2.0以降に実装されたキャラはVer2.0以降に実装されたステージに行かないと突破用アイテムが揃わないという。雲菫もその一人である。
「腕試し」というピックアップキャラのお試し利用イベントをクリアすればレベル40までは使えるらしい。が、おそらく戦力的に頭打ちになるのだろう。
以上を踏まえると、初心者が雲菫を狙うのは得策ではないような気がする。
また、Twitterの先人の教えによると、雲菫ピックアップが終わった後に来る「鍾離」「甘雨」が強いキャラなので引くと良い、ということだった。
それでもガチャを引く
「しかしねぇ……私としては、雲菫に釣られに来たのだから」
「よく喋る!」
ということで、初心者が新規実装キャラを引くためには悪魔の力を使う他無く、またその後の育成も相応の覚悟をしなければならないようだ。
でも引く。だって好きなキャラ使いたいので。
まずはショップから、「創世結晶」という課金アイテムを、フルプライスPCゲーム1本分ほどの金額で購入した。
ちなみに、初回のみ購入金額の2倍分の創世結晶をもらえる。PCゲーム2本分の創世結晶をゲットした。
あとは創世結晶を「原石」というアイテムに変換し、その原石を「紡がれた運命」に変換する。感覚を狂わせるための「お約束」とは言え、回りくどい。ストーリーはわかりやすいのに課金システムはめんどくさすぎるぞ。
後はピックアップガチャを引くだけだ。
この時開催されていたのは、☆5「申鶴」のピックアップと、☆5「魈」のピックアップ。どちらでも雲菫もピックアップされる。
実は雲菫のレアリティは☆4であり、最高レアリティの☆5ではない。あくまでも今回のガチャの目玉は☆5の二人だ。☆4雲菫だけのためにガチャ引く人間は自分くらいなのでは……?
ともかく、最高レアリティを狙う訳じゃない。ウマ娘で例えるなら☆2グラスワンダーを狙うようなものだ。何も怖くない。恐れるな。
おそらく世間一般的には「爆死」に相当するガチャ内容だろうが、無事20連で雲菫を出すことができた。
使ってみると、敵の攻撃を吸収するシールドや広範囲の攻撃、バフによるサポートなど、かなり使い勝手の良いキャラクターだった。性能を見ないでガチャ回したけど使いやすくて良かった。
そしてボイスが良い。「着(ちゃく)!」「崩(ほう)!」「一鼓作气(いっこさき)!」などの(おそらく)中国語が凛としていてとても良い。たまに喋るガチ中国語にはビビるが基本的には真面目で良い子である。
満足していたが……
贔屓目無しで見ても、原神は良くできたゲームだ。今になって始めたのは遅きに失した感があるが、まだまだ続いていくであろう壮大なストーリーに加われたのは良かった。
初心者では苦労する点も多いようだ。気長に遊びつつ、ブランニューワールドを楽しんでいこうと思う。
……というシメが良いかな~、と、この記事のプロットを考えていたある日。
Twitterに、原神のプロモーションツイートが流れてきた。
そこには、(微妙に間違ってる日本語で)こんなことが書かれていた。
テーマイベント「華々しき流年」を参加して、璃月港★4キャラクターが1名獲得できます!
そこに映っていたのは紛れもなく雲菫だった。その隣にはご丁寧にも「無料で招待可能」と書かれているではないか!
つまりわざわざ雲菫目当てに課金してガチャ引く必要はなかった…………と…………?*4
雲菫目当てで原神始めた結果がこれだよ!!!!!
https://genshin.mihoyo.com/ja/character/liyue?char=15
*2:一部中国語で喋るキャラクターのため、中国語部分は杨扬が演じる。
*3:小岩井ことりさん作詞・作曲・歌唱のDB公開で、AI歌声合成の民主化へ躍進。NEUTRINOの新キャラクタ『No.7』がリリースへ - 藤本健の “DTMステーション”
https://www.dtmstation.com/archives/34636.html
*4:結論を言うと、ガチャで引かざるを得なかった。「華々しき流年」の参加条件は冒険ランク28以上であり、初心者がここに追いつくには相応の根気とプレー時間が必要である。
maimai歴1時間未満だけどmaimaiベストアルバム(7年分 全185曲)を聴いてみた(後編)
この手法によって、音ゲー曲発注のノウハウのなかったSEGAは、多くの音ゲーアーティストによるオリジナル曲をmaimaiに収録した。
しかし次のMURASAKiバージョンで、maimaiは少し異なる方向に舵を切る。
【DISC4】maimai MURASAKi~maimai MiLK PLUS(2016年~2018年)
※良い曲が多すぎて選別できないので曲紹介が多いです。
・いっしそう電☆舞舞神拳!/さつき が てんこもり feat. YURiCa/花たん
▲VOCALOIDオリジナル曲のほか、アイドルソングなど様々な活動を行う、さつき が てんこもり。ギャグセンスと語呂の良さが特徴の歌詞は、氏の個性が炸裂している。
・ねぇ、壊れタ人形ハ何処へ棄テらレるノ?/cosMo@暴走P
▲cosMo@暴走Pは「初音ミクの消失」などの作曲者。音ゲーでは「初音ミク Project DIVA」にボス曲を書き下ろしたほか、KONAMIのSOUND VOLTEXやbeatmania IIDXに楽曲を提供した。この楽曲は暴走P名義の特徴でもある荘厳な雰囲気に激しいノイズ、厚いシンセリードを伴う。
・Imitation:Loud Lounge/Ino(chronoize)
▲BMSを中心に活動するIno(chronoize)。キックとシンセの重さに対する上品で軽快なウワモノのコントラストが、独特な陶酔感を作り出す。作曲者本人によると、HARD LOUNGEというスタイルだという。
・四月の雨/cubesato
▲CM楽曲などを手掛けるcubesatoは、チュウニズムへの楽曲提供で初めて音ゲーに参加したという。四月の雨は、ぽつぽつと降る雨の線を思わせる電子音に加えて、水の効果音が随所に鳴る、美しいエレクトロニカである。情景が目に浮かぶようだ。
・Candy Tall Woman/naotyu- feat. 佐々木恵梨
▲naotyu-は昔はBMS作家だが、現在は千葉"naotyu-"直樹として多くのアニソンなどの作編曲を担当している。音ゲーではスマホ音ゲーのCytusへ楽曲を提供。Candy Tall Womanはゆったりとしたジャズでありながら、Bメロからサビ、エレピのソロにかけて音ゲーらしい展開とメロディを楽しめる。
・Mare Maris/M2U
▲韓国音ゲーのEZ2DJをはじめ、DJMAXに提供した「Seeker」「Nightmare」や、スマホ音ゲーのDeemoに提供した「Magnolia」などで有名なM2U。Mare Marisはヴァイオリンの美しい音色から始まるが、曲全体はアコースティックとエレクトリックのキメラである。シンセの音すら弦楽器に聴こえてしまうような、独特な音使いだ。
この時期のmaimaiに感じた印象は二つ。一つ目は、歌モノが強いという印象。二つ目は、音ゲーアーティストの幅が広がったという印象だ。
まず一つ目の歌モノについて、軸となるのが、ボカロPと東方アレンジアーティストだ。
VOCALOIDオリジナル曲で有名なアーティストでは、さつき が てんこもり、「メランコリック」などで知られるJunky、「愛言葉」「ゴーストルール」などのDECO*27。東方アレンジで有名なアーティストでは、豚乙女、DiGiTAL WiNG、Halozy、A-Oneといった面々のオリジナル曲が収録されている。
音ゲーアーティストが多く収録されたDisc3(ORANGE~PiNK PLUS)の時期でも、ボカロ曲で知られるtilt-sixと東方アレンジで知られるA-Oneのオリジナル曲が収録されている。だがこのMURASAKI~MiLKバージョンにかけては、ボカロP・東方アレンジアーティストの人数は増えている。
そして、いずれのアーティストの楽曲も歌モノである。ボカロ曲も東方アレンジも、どちらも歌モノが強いジャンルであり、上記アーティストの十八番であろうことは想像に難くない。
二つ目の印象が、音ゲーアーティストの幅が広がった、というものだ。
これまでのmaimaiは、KONAMI音ゲーで楽曲提供したアーティストを多く収録してきた。また、BMS作家についても、xiや削除、voidなど、SOUND VOLTEXの楽曲公募で採用された面々が多い。これは悪意的に言えば、KONAMIの後追いである。
しかしこのMURASAKi~MiLKバージョンでは、スマホ音ゲーのCytusへ楽曲提供したnaotyu-や、韓国音ゲーのDJMAXで多数の楽曲を提供したM2Uなど、KONAMI音ゲーでは見ないアーティストの楽曲を採用している。また、BMSアーティストとしては、過激な譜面で知られるルゼや、Ino(chronoize)など、こちらもKONAMI音ゲーに提供していないアーティストを収録した。*1もっとも、kamome sanoや、かねこちはるなど、SOUND VOLTEXではお馴染みの面々も収録されているが。
以上二点を踏まえた上で、KONAMI音ゲーの有名人を多く取り入れてきたdisc3までと比較すると、収録楽曲に若干の方針変更があったようにも感じる。
なぜこのような変化が起きたのか?これは全くの推測だが、チュウニズムとのポジショニングが関係しているのではないかと思う。maimai MURASAKiバージョンの稼働が2016年で、チュウニズムの稼働は2015年。チュウニズムは稼働1年といったところだ。稼働初期からチュウニズムは多くのBMS楽曲を移植収録する方針をとっており、それはつまり、BMSを遊んできたようなコアな音ゲーマーがターゲットの一つだということでもある。コアな音ゲーマーが喜ぶような選曲やアーティストはチュウニズムに譲り、maimaiは引き続き裾野の広い音楽を収録する……という棲み分けの結果が、上記二点の印象に繋がったのではないだろうか。もちろん、これはチュウニズムのオリジナル曲を聴いていない時点での筆者の印象だ。チュウニズムの楽曲に触れた際に、答え合わせをしようと思う。
結果として、この時期のmaimaiは、ポップでキャッチーである一方で、他の音ゲーにない個性的な楽曲が集まったように思う。
【DISC5】maimai FiNALE(2018年)
FiNALEバージョンを最後に、maimaiは新筐体へ移行することが決まった。
一区切りであるが故に、その収録曲はこれまでの歴史を思い出させるものとなっている。
・Schwarzschild/Tsukasa
▲初代maimaiにて「Fragrance」を提供したTsukasa。当時の流れを汲みピアノが美しいドラムンベースだが、シンセがメロディを刻み、よりアグレッシブな曲調に進化している。
・QZKago Requiem/t+pazolite
▲もはやmaimaiではお馴染みのt+pazolite。「Garakuta Doll Play」の流れを汲むスピードコアで、GarakutaのBPMを1上回る257BPMを誇る。
・the EmpErroR/sasakure.UK
▲t+pazoliteの「Oshama Scramble!」と並び、「ガラテアの螺旋」を提供したsasakure.UKは、ハイスピードなエレクトロニカを制作。複雑なリズムが絡みながらビルドアップする緊張感と、その後のボーカルパートが美しい。
・PANDORA PARADOXXX/削除
▲7thSenseなどを提供してきた削除。変拍子をはじめ、唐突な展開が連続しリズムを見失わせる楽曲。ベストアルバム付属のブックレットの座談会によると、削除は過去のmaimaiボス曲を聴いて、「やったことのない」要素を考えた末にメトリックモジュレーションに行き着き、「『BPMを2個並走させよう』ってところにたどり着いた」のだそうだ。
聴いたところ、明らかに過去のmaimai曲の流れを汲む曲が多く、当時の背景を調べてみた。
wikiによれば、これはPANDORA BOXXXというゲーム内のイベントだったようだ。ゲーム内で特定条件を達成すると、maimaiの過去のバージョンの色に対応したボス楽曲が現れる。クリアすると青・緑・オレンジ・ピンク・紫・水色のエンブレムが手に入り、全て集めると削除の楽曲「PANDORA PARADOXXX」が現れるという。
実はこのイベントの楽曲は、過去のそれぞれのバージョンに楽曲を提供していたアーティストが作っている。*2
音ゲーにおいて過去のバージョンをモチーフとしたイベントは、例えばbeatmania IIDXにおいては、2009年に行われたPARALLEL ROTATIONや2012年に行われたLEGEND CROSSなどがある。このイベントはそれを思い出す……が、重要なのは、(当然ながら)これができるのは歴史のあるゲームだけだということである。言い換えれば、maimaiにも振り返ることができる歴史ができたということでもある。
新興音ゲーだと鼻で笑い数クレしか遊ばなかった僕には知る由もなかった、7年分の歴史だ。
ところで、注目すべきはそれら楽曲の曲調である。いずれもボス曲ということもあり、激しい展開を備えた曲調になっている。特に初代maimaiで「Fragrance」を提供したTsukasaの「Schwarzschild」は、曲の構成こそ「Fragrance」と同様だが、その音は明確にアグレッシブになり、音ゲー曲としても鮮烈な曲調に進化している。もちろん氏の技術的進化によるものだが、その裏にはSEGAのディレクションの功績もあったのではないかと思う。こうして「ボス曲らしいボス曲」を集めるのは、ただ「音ゲーをわかってる人に作ってもらう」だけでは成し得なかったのではないか。
さて、そのようなボス曲の頂点に立つラスボス、削除の「PANDORA PARADOXXX」を完走すると、エンディングとしてShoichiro Hirata feat.Sanaの「Believe the Rainbow」が現れたという。
・Believe the Rainbow/Shoichiro Hirata feat.Sana
▲「MIRROR of MAGIC」などの楽曲を提供したShoichiro Hirata。今回のボーカルはKONAMIのpop'n musicなどに参加した新谷さなえ。beatmania IIDXに収録された「真夏の花・真夏の夢」のコンビでもある。Believe the Rainbowは聴きやすいテクノポップとなっている。「Believe in me,my mind」という「maimai」の発音をもじった歌詞が印象的だ。
歌詞には「GreeNライム」や「PiNKの羽」など、maimaiの過去のバージョンの色が使われている。重ねて言うが、こういった振り返りができるのは歴史のあるゲームだけである。maimaiにはその歴史があり、7年を祝う資格がある。
【DISC6】ロングバージョン+α
disc6には、収録楽曲のロングバージョンのほか、「PANDORA PARADOXXX」のエピローグとなる「AFTER PANDORA」が収録されている。
聴き終えて
これまでゲームセンターに行くたびに見かけながら、触れてこなかったmaimai。
この10年で、maimaiは着実に成長してきた。もちろんその道は全くのオリジナルではなく、他の音ゲーの文化を貪欲に吸収したものである。その点において「SEGAのやり方が気に入らない」と言う人がいたのも事実だろう。
かく言う僕もその人だったのだ。オリジナルで文化が作れないから、KONAMI音ゲーに提供したアーティストを盗んでくるしか能が無いんだ、と思っていた。
だが今回ベストアルバムを聴いて、maimaiはただKONAMIを真似ているだけではないということを知った。音ゲーの発注の仕方がわからず手探りの状態から、さまざまな方面のアーテイストに声をかけたが故に、かつてKONAMI音ゲーで楽曲を制作したアーティストから洗練されたガラージを引き出し、ボカロPからキャッチーなハードコアを引き出し、なかなか注目されなかったBMSアーティストから新しいスタイルを引き出した。音ゲーを知らない、何色でもない土壌があったからこそ、maimaiには多くの名曲が生まれたのだ。あらゆる方面から色を取り込んだmaimaiは、まさしく虹色となったはずだ。
とは言え、これはあくまでもmaimai10年の歴史のうちの「7年分」の歴史である。
maimaiはFiNALEバージョンの後、新筐体に入れ替わり、「maimaiでらっくす」として今もゲームセンターで稼働し、現在進行形で更新を続けている。
maimaiはこの後、どのような進化を遂げたのか。それは実際に筐体に触れてみるまでわからない。
楽曲の予習が終わったのなら、実践あるのみ、である。
*1:KONAMI音ゲー提供者以外のBMSアーティストを取り入れてこなかった訳ではなく、例えばRasについてはSOUND VOLTEXに先んじて収録している。
*2:■初代:Schwarzschild/Tsukasa(当時「Fragrance」提供)■GreeN:QZkago Requiem/t+pazolite(当時「Garakuta Doll Play」提供) ■ORANGE:the EmpErroR/sasakure.UK(当時「ガラテアの螺旋」提供) ■PiNK:Alea jacta est!/BlackY fused with WAiKURO(当時「AMAZING MIGHTYYYY!!!!」提供) ■MURASAKi:FFT/cybermiso(当時「Panopticon」提供) ■MiLK:雷切-RAIKIRI-/kanone(当時「花と、雪と、ドラムンベース。」)提供
maimai歴1時間未満だけどmaimaiベストアルバム(7年分 全185曲)を聴いてみた(前編)
ゲームセンターにドラム式洗濯機*1が現れてから、今年7月で10年になる。
そのベストアルバム『maimai ALL PERFECT COLLECTiON』が、2020年に発売された。
2012年に稼働した初代から2019年のFiNALEバージョンに至るまで、maimaiオリジナル曲がほぼ網羅された6枚組のCDで、収録曲数はなんと185曲。7年分の集大成である。
さて、そんな7年分のCDと対峙する僕はというと、ほとんどmaimaiを遊んだことがなかった。
2012年にリリースされた当初に1、2クレ程度遊び、その後友達と一緒に2クレ程度。それ以降は遊んだことがなかった。1クレ3曲=10分程度と換算しても、おそらく総プレイ時間は1時間に満たない。
当時の僕は、maimaiを少し遊んだところで早々に見切りをつけていた。ゲームシステムがハマらなかったことに加え、収録曲のセンスがハマらなかったのが理由だ。
しかしその後、maimaiはどうなったか。
ブームを巻き起こしたmaimaiはみるみるうちに増殖し、ゲームセンターはドラム式洗濯機だらけになった。
maimaiの後、2015年にリリースされた「チュウニズム」は好評を博し、2018年には「オンゲキ」が更に続けてリリースされた。
今や、ゲーセンの音ゲーコーナーの一角はSEGA音ゲーが占める。SEGA音ゲーはアーケード音楽ゲームとして独自のポジションを築いたのだ。
そんな音ゲーにほとんど触れていないのは、音ゲーマーとして恥ではないか?
そんな反省もあり、まずはSEGA音ゲーの立役者でもあるmaimaiの収録曲を聴いてみようと思い立ったのだ。
幸い、このベストアルバムは、2012年稼働の初代からFiNALEバージョンまで、歴史を追うような順番で楽曲が収録されている。
せっかくなので、
・印象に残った曲
・収録曲の傾向の変化
を挙げながら、maimaiの歴史に触れてみようと思う。
なお、ピックアップはあくまでも個人的な印象によるものであり、当然これがmaimaiの歴史全てではない。
しかしその歩みを垣間見ることはできるだろう。
【DISC1】初代maimai~maimai PLUS(2012年~2013年)
・We Gonna Party/Cranky
▲BMSのほか、おもしろFlashこと「num1000」に楽曲「Party 4U」が使われたことで有名なCranky。同氏といえばコレ、と言うべきアガるレイヴになっている。※引用はロング版
・Fragrance/Tsukasa
▲Tsukasaは、韓国音ゲー「DJMAX」に提供した「The Clear Blue Sky」などが有名。静かなイントロから始まり、繊細なピアノが綺麗なドラムンベースである。
・オレンジの夏/Hiro&タクマロ
▲SEGA社内アーティストHiroによる男性ボーカル曲。シティポップ風で、音ゲーとしては珍しいほど落ち着いた曲調だ。
・Lionheart/Masayoshi Minoshima
▲Masayoshi Minoshimaは、東方アレンジの「Bad Apple!!」で知られる。イントロのハードなベースを聴けば、氏の楽曲だとすぐにわかるはずだ。
・Sky High[Reborn]/大久保 博
▲SEGAのレースゲーム、デイトナUSAの楽曲のアレンジ。アレンジャーの大久保博は、ナムコのレースゲーム「リッジレーサー」シリーズで有名なアーティストであり、レースゲーマーにとっては夢のコラボレーションだ。原曲の爽やかさはそのままに日本語ボーカルを加え、ダンサブルな四つ打ちに変身した。
印象的なのは、バラエティ豊かな収録傾向だ。
SEGA社内アーティストによる親しみやすいポップやロック。そこにクラシック音楽の「G線上のアリア」のアレンジである「True Love Song」や、民謡「炭坑節」のアレンジである「炭★坑★節」なんて曲もある。
中でも目立つのがゲーム音楽だ。SEGAのゲームであるバーチャファイターやボーダーブレイクのBGMも移植されているほか、[Reborn]として、往年のゲーム音楽を大胆にアレンジした曲も収録されている。
加えて、東方アレンジで有名なARM(IOSYS)、D.Watt(IOSYS)、Masayoshi Minoshima、REDALiCE、発熱巫女~ず、といった面々のオリジナル曲が並ぶほか、PC音ゲー「BMS」で有名なCrankyのオリジナル曲も収録された。
こうして見ると、聴き覚えのあるメロディ、やったことのあるゲーム、見たことのある名前……と、ユーザーの目や耳を引くための「取っ掛かり」を重視しているように思う。
ターゲットとしていたのは、他のSEGAゲームを遊んできたゲーマーであり、東方に育てられたニコ厨であった……かもしれない。
一方で気になるのが曲調だ。収録曲の多くは、聴いていて疲れない……悪く言えば「地味」な曲だ。言い換えれば、いわゆる音ゲー的な曲が少ない。
音ゲーの曲といえば、起伏に富んだダイナミックな展開や、8小節同じ音を聴かせない矢継ぎ早な展開、200BPMを越える高速曲や、音数が多く激しい曲……といった特徴が挙げられるが、そうした曲が少ない。多くの曲は、BGMとしても聴けそうな曲ばかりだ。実際、移植されているゲーム音楽の多くは、元々はゲームBGMなのだ。
一概に比較するべきではないが、2012年~2013年のKONAMIは、DDRに「PARANOiA Revolution」を入れたり、各機種に「Elemental Creation」を入れたりしていた。やりたい放題である。
もちろん音ゲー機種ごとに適した曲調があり、忙しい曲を入れればそれが良いという訳ではないが、少なくとも当時の僕はこの雰囲気が退屈で仕方なかった。
だが、この問題について、maimaiはある解決策を思いついたようである。
【DISC2】maimai GreeN~maimai GreeN PLUS(2013年~2014年)
・Garakuta Doll Play/t+pazolite
▲t+pazoliteは、BMSや東方アレンジ、HARDCORE TANO*Cでの活動で有名。ハードコア×ダークな曲調は氏の特徴の一つで、Garakuta Doll Playはこれまでのmaimaiの曲調に比べると異質だ。この楽曲は後に他の音ゲー機種にも移植され、KONAMIのSOUND VOLTEXでも遊べるようになる。
・System "Z"/Jimmy Weckl
▲かつてKONAMIのGuitarFreaks&DrumManiaで楽曲を提供してきたJimmy Weckl。この曲はGarakuta Doll Playと並ぶボス曲で、当時最高難易度のLv.12とのこと。リズムの難しい序盤は譜面を想像しただけでも具合が悪くなってくる。
・みんなのマイマイマー/ビートまりお(COOL&CREATE)+ARM(IOSYS)
▲「ウサテイ」のビートまりおと「チルノのパーフェクトさんすう教室」のARMという、東方アレンジで有名な二人の合作。ユーロビートを軸にPPAPなど電波曲らしい要素が盛り込まれている。
・Pixel Voyage/YMCK
▲太鼓の達人に楽曲を提供したこともあるYMCK。Pixel Voyageはボーカルとリードのメロディが交差するサビが気持ちいいチップチューンだ。
音ゲーらしい曲が少ない、と上に書いたが、GreeNバージョンで変化が現れる。
t+pazoliteの「Blew Moon」やSHIKIの「Death Scythe」など、いわゆる「音ゲーコア」と言われるような、展開に富んだ高速BPMのハードコアが収録される。
そしてそのような変化の最たるものが、t+pazoliteの「Garakuta Doll Play」である。BPM256でガバキックが鳴り響き、緩急の激しい展開が待ち受ける。
ある種、音ゲーらしからぬほんわかとした雰囲気のあった初代に対して、熟練の音ゲーマーでも閉口するようなガチガチのハードコア/スピードコア。
なぜ突然、このような「音ゲー曲」が投入されたのか。
アルバムに付属するブックレット末尾にある対談企画の中で、SEGAディレクターのコハDとJack、そして楽曲コンポーザーのt+pazoliteの会話として、次のようにある。
Jack まじめな話をすると、(中略)その頃のセガチームって「どういう風に発注をしたらどういう曲ができる」っていうノウハウがなかったんだと思うんですよね。
コハD そうそう。さらに正確に言うと、ゲームミュージックの中でも音楽ゲームの楽曲は結構異端だと思ってて。その音楽ゲームの楽曲がどういうロジックで出来上がるかっていうのが当時の僕たちにはわからない。だから作り方がわからないものをディレクションすることができない。結果、わかってる人に作ってもらうしかねーな!っていうので、そういう発注*3になったっていう…。できないヤツが関わったらロクなもんできないじゃん(笑)?
(中略)
t+pazolite そういう意味では、こちらも本当運がよかったです。ただ、当時はmaimaiが稼働して方向性を見極めていた頃だと思ってて、僕自身も音ゲーっぽい曲を作るノウハウはあるんですけど「maimaiっぽい曲」ではないんですよね。だからやりやすい分そこが苦労した覚えがあります。*4
当時のSEGAは音ゲーを本格的に作り始めたばかりで、アーティストへの楽曲の発注が手探りだったようだ。そこでSEGAの取った手法が、「音ゲー曲をわかってるアーティストに依頼する」というものであった。
結果、このGreeNバージョンでは、BMS作家であるSHIKIの「Death Scythe」や、Staの「Monochrome Rainbow」、KONAMI音ゲーで楽曲を提供してきたJimmy Wecklの「System "Z"」、平田祥一郎の「Beat of getting entangled」などが収録される。上に挙げたt+pazoliteもまた、BMS作家だった過去がある。
いずれのオリジナル曲も音数が多かったり、展開にメリハリがある。音ゲーに精通するアーティストを増やしたところ、音ゲーらしい曲が増えた……という当然の帰結だった訳だ。
もっとも、この時点では音ゲー系アーティスト以外の楽曲も多い。東方アレンジ系アーティストでは、ビートまりお×ARMによる合作曲「みんなのマイマイマー」や、SOUND HOLIC、A-One、ALiCE'SEMOTiON(REDALiCE)などのオリジナル曲が収録される(ただし、このうちの一部アーティストは他機種の音ゲーにオリジナル曲を提供したことがある)。
【DISC3】maimai ORANGE~maimai PiNK PLUS(2014年~2016年)
・Oshama Scramble!/t+pazolite
▲Garakuta Doll Playのt+pazoliteによるアップテンポなハードコアレイヴ。「Let's 牛乳death!」から始まる中盤のHooverシンセを聴けばアガらざるを得ない。※引用はロング版
・D✪N’T ST✪P R✪CKIN’/EB(aka EarBreaker)
▲EarBreakerは、BMSのほか、韓国の音ゲーであるDJMAXに提供した「Super Lovely」「Dreadnought」で知られるアーティスト。強いキックに何層ものシンセサウンドとベース、声ネタが重なる。重厚なエレクトロである。
・ガラテアの螺旋/sasakure.UK
▲BMSに加え、ボカロPとしての活動でも知られるsasakure.UK。ピアノ主体のハイスピードなエレクトロニカで、氏のBMS楽曲「Jack-the-Ripper◆」からの進化を感じさせる。※引用はロング版
2015年、JOYPOLICEとのコラボレーション楽曲として、これら3曲が追加された。
アップテンポでキャッチーな「Oshama Scramble!」、重厚なエレクトロの「D✪N’T ST✪P R✪CKIN’」、インテリジェントな「ガラテアの螺旋」。誰でもこの3曲のうちどれか1曲は刺さるはず。そう断言できる、水も漏らさぬラインナップだ。
この3曲はmaimaiに実装された当時話題になっていたため、僕も思わず聴いてしまった。そして聴いた時、「maimai、ちょっと雰囲気変わったかも?」と思ったのだ。
しかしこれまでの流れを踏まえれば、これら3曲もまた、「音ゲー曲をわかってる人に音ゲー曲を書いてもらう」というSEGAの手法の帰結なのだとわかる。三人とも音ゲー曲を作った経験があり、(「JOYPOLICEで流れるような曲」というオーダーがあったにせよ、)音ゲーの曲を作ることは難しいことではなかっただろう。
上記の3名だけではなく、このバージョンは「音ゲー曲をわかってる人」で溢れている。つまり、音ゲー界隈で有名な人ばかりである。
具体的に見て行こう。
・MIRROR of MAGIC/Shoichiro Hirata feat.SUIMI
▲KONAMIのBEMANIシリーズに「Luv 2 Feel Your Body」など多くの楽曲を提供した平田祥一郎は、ハロプロのアレンジャーを務めたこともあるアーティスト。MIRROR of MAGICは大人びた雰囲気のガラージで、氏の経歴の深さが窺える一曲だ。
・7thSense/削除
▲SOUND VOLTEXに公募採用され、BMSイベントでの優勝経験もある削除。オーケストラとダンスミュージックが融合したような壮大で力強い音楽は唯一無二と言える。7thSenseは7拍の楽曲で、リズムを見失わせるような音ゲー的難所を数多く備える。
・Hyper Active/HiTECH NINJA
▲SOUND VOLTEXに数多く楽曲が採用されたLapix……の別名義と噂される、HiTECH NINJA。目まぐるしい展開とストップ&ゴーが忙しいハイテックとなっており、濃密な2分間を味わえる。
まず、過去にKONAMI音ゲーに楽曲を提供していたTatshや小野秀幸、カタオカツグミ。GuitarFreaks&DrumManiaに収録された「I'm a loser」で知られる樽木栄一郎も参加している。
次に、BMSで有名なxi、void、削除、Ras。Anも、ユニットのAcutic Notesとして参加する。
これだけではない。別名義を名乗っているが、KONAMIのSOUND VOLTEXに数多く楽曲が採用されたLapix、BlackY、C-Showや、beatmania IIDXに楽曲提供しているUSAOも参加していると噂される。*5また、同じくSOUND VOLTEXに採用されたTeam GrimoireもProject Grimoire名義で参加している。
極端に「音ゲー曲」に寄せられたようにも思える、なんとも潔いラインナップだ。
特に注目すべきは、KONAMIのSOUND VOLTEXの公募で受かった面々や、BMS作家を多く収録している点だ。楽曲公募で採用された、などの前例があるとはいえ、当時まだ商業ゲーム経験が浅いアーティストもいただろう。それをあえて積極採用する点に、SEGAの大胆な戦略が窺える。
多くの音ゲーアーティストを取り入れることによって、初代とは別物の雰囲気となったORANGE~PiNKバージョン。続くMURASAKiバージョンでは、更に過激な音ゲー曲が入るに違いない。
そう思っていたが、意外にもmaimaiは少し違った方向に舵を切るのであった。
*1:maimaiの筐体は洗濯機に似ている。参考:https://twitter.com/SEGA_OFFICIAL/status/669423940356464640
*2:もちろん、SEGAはmaimai以前からアーケード音楽ゲームをリリースしていることを忘れてはならない。maimai以前では「初音ミク Project DIVA Arcade」(2010年稼働)など。
*3:t+pazoliteへの発注について、Blew Moonは「ハッピーハードコアっぽいわかりやすいやつ」、Garakuta Doll Playは「ボスっぽい速いやつ」であったと語られている。
*4:『maimai ALL PERFECT COLLECTiON SPECIAL BOOK』 スペシャル座談会【楽曲編】 ノンブルが無いため頁数は省略。
*5:LapixはHiTECH NINJA名義、BlackYはWAiKURO名義、C-ShowはD-Cee名義、USAOはShandy Kubota名義。一部は別人という設定になっているので、ここではあくまでも推測ということにする。
Steam版エルシャダイ(一番いいの)を買った話
あの「エルシャダイ」がSteamでついに登場。
あの、と言って通じる人間は間違いなく1万4000年前の人間である。
エルシャダイは2011年に発売されたPS3・Xbox360用ゲームだ。
エルシャダイの名を世間に広めたのはゲームシステムでもグラフィックでもなく、発売前に公開されたPVである。
そのPVがこれだ。
登場人物「ルシフェル」の、ミステリアスなセリフ。
「大丈夫だ 問題ない」と言って戦うもフルボッコにされる主人公「イーノック」。
かと思いきや時間が戻り再出撃する謎展開。
PVの内容があまりにもシュール。
これが大きな話題となり、ニコニコで東方MADやらアイマスMADやらに加工されているうちに、PVに登場する、
というセリフは2010年のネット流行語大賞金賞に輝いてしまった。
2010年当時の僕も一連のシャダイ語録にハマり、あらゆる日常生活を問題ないことにし、ここで死ぬ運命ではないことにしてきたが、ついにゲームを買うことは無かった。
理由は単純で、フルプライス払うにはあんまり面白くなさそうだったからである。
さて時を経て2021年。
エルシャダイを買わず、艦これで育った僕は、ウマ娘のエイシンフラッシュPUガチャで必死に集めた無料石を徹底的に溶かし尽くされ、辛酸を嘗めていた。
「なんでもいいから普通のゲームが遊びてぇ……」
そんな傷心の最中に、Steam版エルシャダイの登場である。
エルシャダイは2011年に死ぬ運命ではなかったのだ。
この絶好のタイミングに、神は言っている……買えと。
さっそくSteamを開き、エルシャダイを購入することにした。
9月16日までセール対象のため、通常版が¥3,223、アートワークとサウンドトラックを同梱したデラックス版が¥3,918とほとんど差がない。
「一番いいのを頼む」
そう言ってデラックス版を買ったのだった。
なお、レビューの類は一切調べていない。
そんな衝動買いで大丈夫か?
感想
難易度NORMALで一周終わったので印象に残ったところを。
【良いところ】
①美しすぎるビジュアル
問題のPVをご覧頂ければわかる通り、エルシャダイは個性的な世界観を持っている。
マップやエネミーのデザインは独特で、神聖でありシンプルでありトライバルでもある。
グラフィック自体は10年前のもののはずだが、それでも「綺麗だな」と思わせられる。
それだけデザインのレベルが高く、タイムレスなのだと思う。
②単純操作でもちゃんと戦闘
主要な操作は、
左スティック:移動
Aボタン:ジャンプ
Xボタン:攻撃
RBボタン:ガード
LBボタン:武器の浄化
とシンプル。トリガーボタン(RT、LT)は一切使わない。
ここから、
Aボタン→(少し遅らせて)Aボタン:ガード崩し攻撃
RBボタン+Aボタン:武器ごとの特殊移動
などの操作がある。
体感の操作難易度としてはスマブラくらい。
カメラ操作がないのも楽で良い。
ともすれば、単純操作はマンネリ戦闘になりがちだが、
エルシャダイには、三種類の武器がある。
三種類の武器ごとに適切な攻撃距離や素早さが変わり、武器ごとの特殊移動・特殊攻撃が変化する。
そしてその武器は、ダウンした敵から武器を奪うことで切り替えることができる。
よって戦闘中は、今装備している武器から、どの敵からどのように攻撃してどの武器を奪うか……を考えながら戦う必要がある。
シンプルだが、戦闘の進め方が悪いとザコ戦でも苦戦し、何度も死んでしまった。
なお体力が尽きても、ボタンを連打することで、一定回数までは「大丈夫だ 問題ない」することができる。
③BGM
買う前は全く期待していなかったが、BGMが綺麗で美しい。
これが①の魅力である世界観とよくマッチしている。
サウンドトラックは配信サイトでも購入することができるが、デラックス版を購入するとSteamでダウンロードすることができる。
一番いいのを頼むと良い。
【悪いところ】
①展開飛ばし過ぎやろ
ストーリーは、一部の天使が神の知恵を盗んで堕天し、地上界で勝手してるので、主人公イーノック(とルシフェル)は神のお使いで堕天使たちを捕まえに行くというもの。
神の知恵で地上の人間たちは偽りの繁栄を遂げているが、それは神の知恵によるものであって人間の進化でも何でもないので、堕天使を排除して、地上の人間たちが自らの意志で進化できるようにするという。
つまりアーマード・コアである。
それは良いが、ストーリーの進行は、ステージとステージの間に挟まれる紙芝居とルシフェルの語りで進行する(上図参照)。
普通のゲームであればイベントシーンで進むようなストーリーが、エルシャダイでは多くがこの紙芝居で進行してしまう。
そのためステージとステージの繋がりが急で、ストーリーをダイジェストで観ているような感覚に陥る。
特にChapter05の堕天使バラケルは、敵を倒せた理由をまともに説明することなく語りですっ飛ばしてしまい、「よくわからない力が出たけど堕天使倒せたからオッケー!」というオチになってしまっている。
これは完全に説明放棄である。そこまでアーマード・コアしなくていい。
②人物描写不足
また気になったのが、人物描写の不足だ。
例えば上図の人物、アルマロス。
堕天使の一人で、主人公イーノックの友人だったとされているが、イーノックと友人らしい絡みをする場面はない。戦闘中に話す場面でもあれば良かったのだが、アルマロスは堕天した時に声を失ってしまったという設定。
ストーリーではイーノックが冥界に落ちてしまい、アルマロスは友人を失って嘆く、というシーンがあるが、そんなに仲良かったのか……と、いまいち腑に落ちなかった。
このような描写不足は、上記の通りストーリー進行をルシフェルの語りで飛ばしてしまったことにも起因していると思う。
たとえテンポが悪くなったとしても、回想シーンの一つや二つがあっても良かったのではないだろうか。
【まとめ】
PV通りの独特な世界観がやはりエルシャダイの魅力だと思う。
一方で、ストーリーと人物描写の不足のせいで、この世界観に100%没入できなかったのはとても惜しいことだ。
エルシャダイには設定資料集や原作小説がある。
これを読むと、天使が堕天できた理由やバラケル戦の真相、ルシフェルの思惑などがわかるようになるという。
だが個人的には、イーノックを操作して、この世界をもっと歩き回りたかったというのが本音だ。
10年前の当時、エルシャダイの開発は不景気などに振り回され、万全の出来で発売できなかったと聞く。
発売当時の評価は「大丈夫じゃない 問題だ」だったかもしれないが、
もし諦めなければ、より良いゲームに繋がるかもしれない。
10年の時を経て蘇ったエルシャダイは、ここで死ぬ運命ではないだろう。
好きな音ゲーが仮死状態になって二年が経ちました(後編)
埼玉県か茨城県か。
MUSECAのオンライン筐体は、関東にはもうその2県にしか残っていないらしい。*1
さらに詳しく見てみると、
埼玉県は「アミューズメントフィールドバイヨン」
茨城県は「AMジャムジャムつくば店」
と、1県に1店舗しかないようだ(本記事執筆時点)。
オンラインに繋がっているのは関東に2店舗しかないのに、現役オンラインサービス中のアーケード音ゲー。
MUSECAの現状はつくづく不思議だが、まだオンライン筐体があることに安心した。
ある日、僕は埼玉県に立ち寄るチャンスを得た。
その機会に、埼玉県の「アミューズメントフィールドバイヨン」に行ってみることにした。
埼玉県ふじみ野市うれし野。
ひらがなが多くてかわいい。
ソヨカというショッピングモールの道路一本挟んだ向かいに、LCモールというこれまたショッピングモールがある。
バイヨンはその二階にあった。
なんじゃこりゃ。
とてつもないインパクト。これがゲーセンの入り口なのか。
バイヨンはカンボジアに実在する「バイヨン遺跡」をデザインコンセプトとしており、随所に遺跡の意匠を凝らしている。
この手のコンセプトタイプのゲーセンに入るのは川崎の九龍城こと「ウェアハウス川崎」*2以来だが、やはりニヤっとしてしまう。入場のテンションが上がるし、店舗の愛情も伝わってくる。
看板キャラクターのばいのんちゃん。インディー・ジョーンズ風。
店内はフロアを横断するようにメダルゲームやスロットゲームがあり、店舗左側にレトロゲームや格ゲー・レースゲー、右側に音ゲーや他ビデオゲームといった構成。
高年齢層をターゲットにしているのかと思ったが、学生や若いカップルも見かけた。
ここにMUSECAがある。
音ゲーコーナーに入り、ずらりと並ぶmaimai筐体の裏に、その筐体はあった。
折り紙をモチーフにした筐体。五つの回転するボタン。フットペダル。
2018年以来のMUSECAとの再会である。
e-amusement passを筐体にかざすと、画面が切り替わる。
「暗証番号を入力して下さい」
MUSECAのナビゲートキャラ「イリル」の声が聞こえる。
MUSECA特有のタッチ式ボタンで番号を入力する。
「確認しました」
「このプレーデータでエントリーします」
プレーデータが表示された。
そこにあるのは、二年前と変わらないデータ。
紛れもなく現役でサービス継続中の証である。
「ようこそ、MUSECAの世界へ」
イリルの声も懐かしい。
遊んでいた頃の思い出がどんどん蘇る。
そして選曲画面に入る。
カーソルは最後に遊んだと思われる「MeteorA」に合わさっていた。
この曲はレベル15(最高難易度)ですさまじく難しいので、まずは指ならしをすることにした。
最初に選んだ曲はもちろんyasetaさんの「Lo-Fi-M」だ。
もっと下手になっていると思ったが、意外と悪くないスコアが出た。
自転車の乗り方のようなもので、一度習得してしまえば身体が覚えているものなのかもしれない。
選曲画面を回しているうちに、好きだった曲を思い出してきた。
オリガミカル・スウィートラヴ / かめりあ feat.ななひら
Metsysralos / 庭師
Redshift / technoplanet
さて、一通り指ならしが終わったところで、あることを確認することにした。
それは、Grafica(カード)でまだゲットしていないものがあるかどうか、である。
MUSECAのゲーム内容を軽く説明しよう。
前編に書いた通り、MUSECAはカードゲーム×音ゲーである。
MUSECAには2つのプレーモードがある。
-
シンプルに音ゲーを遊ぶモード
このモードでは使うGraficaの性能はゲームシステムやスコアには一切影響がなく、ただ背景に表示されてかわいいだけである。
- Graficaを解放するモード
このモードでは所持しているGraficaを使って、新しいGraficaを解放するミッションに挑戦する。
ミッションごとに定められた描画量(通常のスコアとはまた別のスコア)を出せればGraficaが解放、ゲットできる。
音ゲーの実力に加えて、Graficaの性能が影響するモードだ。
この②のモードがMUSECAのキモである。
前編にカードゲーム×音ゲーは成立しなかった、と書いたが、1+1/2という大型アップデートの後は、音ゲーのスコアとカードゲームによるスコアを分けることで、一つの遊び方が完成した。
このモードでは自分の実力とGraficaによる戦略性が組み合わさる。これがなかなか面白く、僕はこのモードが好きだった。
さて、所持していないGrafica、つまりまだクリアしていなミッションはあるのかどうか。
ドキドキしながら、選曲画面を②のモードに切り替えた。
そこには、まだクリアしていないミッションが一つだけ残されていた。
お前かい。
このGraficaは……説明が難しい。
これは、コナミ音ゲーの連動企画「NEW Generation 流星拡散フェスタ2016」というイベントで入った楽曲「Triple Counter」のムービーをイラストにしたGraficaである。
ちなみに写っている人の顔はdj TAKAというアーティストで、コナミ音ゲーのレジェンドだ。
CVはそのdj TAKAと、jubeatの「Evans」などの作曲者で今はコナミアミューズメントの執行役員でもあるDJ YOSHITAKA。二人はTriple Counterの作曲者である。
この解放ミッションの課題曲はもちろんTriple Counter。
他のコナミ音ゲーでご存知の方も多いと思うが、この曲はとにかく速くてしんどくて難しい。
MUSECAの譜面がどうなっているか、ご覧頂きたい。
挑戦したところ、案の定ミスをしまくった。
Graficaは解放できず、リザルトの描画達成率が表示される。*3
「81%」
ぜんぜんダメやん。
だが、ここからがMUSECAの醍醐味でもある。
ルールをもう少し詳しく説明すると、
このモードでは、楽曲の中に定められた3か所の区間*4がある。その区間内でのみ、Graficaの性能・効果が発動する。
各区間1枚、計3枚のGraficaをどの区間に割り当てるかは自由で、ここに戦略性がある。
例えばこのGrafica。
ト゛ットえアイト゛ル ひ゜くせたん。
スキル効果に「ERRORのたびに描画力が大きくダウン」とある。
ひ゜くせたんは基本性能(描画力という)が高く設定されているが、ミスをする度に性能が下がっていってしまう。
従ってこのGraficaは、ミスしてしまうような難しい区間に配置するのを避けて、ほぼ確実にミスをしない区間に配置することで真価を発揮する。ハイリスクハイリターンなスキルと言える。
1ミスもしない実力があるなら何も考える必要はないが、今回のように実力で届かない場合は戦略をよく考える必要がある。
言い換えれば、Graficaの戦略次第では音ゲーの実力が足りなくてもカバーできる、ということだ。
さて、このように譜面とカードの効果を考え、試行錯誤しつつ選んだGraficaはこの3枚。
1枚目:コネクトリング / 秋赤音
コネクトガール。
2枚目:煌めく紫水晶 / 墨洲
アメジストさん。
3枚目:謎の文学少女 / にほへ
おなじみのしおりちゃん。
1枚目のコネクトガールは、ミスする度に性能が下がるスキル。代わりに基本性能が高い。
最初の区間は比較的ミスをしにくいので、ここでミスしないように頑張り描画量を稼ぐ。
2枚目のアメジストはスキルなし。
2番目の区間はどうしても連続してミスする箇所があるので、基本性能のみで考える。
3枚目はMUSECAで最も推しているキャラ、しおりちゃんである。
最後の区間は一番最後の盛り上がりで、譜面密度が高くミスも多くなる。スキルはないが、稼働末期にレベル上限が上がったことで基本性能が高いため、描画量を稼いでもらう。
というわけで、結局2枚がスキルなしというカードゲームとして終わってるチョイス*5となった。
この編成で再挑戦する。なおすでに10回以上挑戦している。
「98%」
これは行けるんじゃないか。
1クレ3曲すべてTriple Counterに費やす。
「99%」
「98%」
なんで下がるねん。
実は最初の区間で、途中でどうしても繋がるか繋がらないかという際どい譜面があり、コネクトガールの性能が下がってしまうことが何回かあった。
最後の区間もミスが多く、しおりちゃんの性能に頼るだけでは稼ぎきれない。
ここから先は自分の実力勝負である。
最初の区間をとにかく繋ぎ、最後の区間で1ノートでも多く取る。
さらに1クレ。
「99%」
「98%」
なんで下がるねん。
しかし次の3曲目は良かった。最初の区間でミスを抑え、最後の区間も落としていたDスピンオブジェクト(方向指定つきの回転オブジェクト)を取った。
行けるという確信があった。
そして。
「終わった……」
最後の区間が終わったと同時に、しおりちゃんの声が聞こえた。
それと同時に、背景にGraficaが現れた。
「100%」
「もしかしてdj TA……」
「違う違う!俺リサリシア!」
流れるdj TAKAとDJ YOSHITAKAの声。
こうしてTriple Counterを解放することができた。
上級Graficaを全て解放した画面。
Grafica自体の収集はこれで終わりということになる。*6
前編に書いた通り、MUSECAはカードゲーム×音ゲーを実現しようとして、失敗した作品だった。
それでも改善しようとアップデートして実装されたこのGrafica解放ミッションは、音ゲーの実力とカードの戦略性が絡み合う良いモードだったと思う。
Graficaの効果を考えて戦略を練り、その上で足りない分を、自分の実力を出し切って勝ち取る。そうしてGraficaを解放した時の達成感は格別だ。きっと他のゲームではこの感覚は得られないだろう。
Triple Counterを解放し、そう改めて実感した。
二年以上前に、MUSECAにおける難関ミッションの数々……「絶対零度」が課題曲の音姫や「Redshift」が課題曲のレッドカーペット、「MeteorA」が課題曲のブリアレオスなどをクリアした時も、この感覚を味わってきた。
これがMUSECAの面白さなのだ。
その後引き続き何クレか遊び、最後にもう一度Metsysralosをプレーして、遊び納めとすることにした。
二年前のスコアは越えられなかったが、とても気持ちの良い終わり方だった。
リザルト画面を終えると、「プレーデータを保存しています」と表示された。
当然である。MUSECAは半分死んでいるが、半分生きている。
けれど、もう一度同じ状態で遊べるかどうかはわからない。
今、MUSECAはゆっくりと死んでいく。
残っているオンラインのMUSECAは僅かだ。ゲーセンがこれをオフラインに切り替えるかもしれない。そうなれば、ゲームは遊べるが、これまでのプレーデータは使えない。難関ミッションで勝ち取り、育ててきたGraficaたちとはお別れだ。
あるいは、コナミがオンラインサービスを切るのが先かもしれない。
それは数年後か、あるいは近い未来かもしれない。
MUSECAが生まれる瞬間を見て、MUSECAが仮死状態になる瞬間を見た。
いつかオンラインサービスが正式に終了し、MUSECAは死んで、「かつて存在した音ゲー」としてレトロゲームの仲間入りをするのだろう。
せめて五鍵ビートマニアのように、オフラインでもひっそりとどこかのゲーセンで動いているようなゲームになってほしい。
そして100円を入れたプレイヤーに、イラストと音ゲーが絡み合うこの素晴らしい世界を見せてほしい。僕自身も、その時に100円を入れるプレイヤーでありたいと思う。
筐体が消えて本当に完全に遊べなくなる最期の時まで。
そう思いながら、筐体のイヤホンジャックからプラグを抜いた。
「お疲れさま。……ありがとう。」
しおりちゃんの声を聞きながら、筐体を後にした。
*1:オフライン筐体はもう少し設置店舗が多いと思われる。だがそもそも最終アップデート(PIX:*:B:A:2018******)を適用した店舗が少なく、オンラインにしろオフラインにしろ全国的に台数は多くないのが実状である。参考→ MUSECA設置店舗wiki
*2:2019年閉店。
*3:解放ミッションは初級・中級・上級がある。下の難易度を選んでもGraficaの解放は可能であり、下の難易度で解放した場合はGraficaのレベル上限に制限がかかるだけである。ここでは筆者のこだわりにより上級以外では解放不能とする。
*4:正式名称はギフテッドエリア。
*5:ゲームバランスが良くないのではないか、と言われれば肯定も否定もできない。実際には、特定のノートで描画力が上がるスキルや、特定のキャラと組み合わせると性能が上がるスキルなど、様々なスキルがある。
*6:「上級」の上に「特級」という難易度があるが、特級は所持Graficaのレベル上限を解放するための難易度である。
好きな音ゲーが仮死状態になって二年が経ちました(前編)
好きなゲームがサービス終了になった経験ってありますか。
僕はない。でも好きなゲームが今も半分死んでいる。*1
コナミのアーケード音楽ゲーム「MUSECA」(ミュゼカ、正確なスペルは「MÚSECA」)が2018年に更新を停止して二年が過ぎた。
MUSECAのゲーム内容は公式サイトをご覧いただくとして、簡単に紹介すると、
MUSECAは「イラスト要素を前面に出した音ゲー」。
「カードゲーム×音ゲー」と言えば話が早いかもしれない。
「Grafica」というカードを集めて、それを使って音ゲーをする。
MUSECAがリリースされた2015年には既に、似た要素のスマホ音ゲー「スクフェス」「デレステ」がリリースされていたものの、
ゲーセンに置くアーケードゲームでカードゲーム×音ゲーをやろうというのはかなり大胆だった。*2
僕が初めてMUSECAをプレーしたのは2015年。MUSECAが稼働を開始した年だ。
その時の感想がこれだ。
あと新音ゲーのミュゼカ初めてプレーしてきた。叩く・回すが一つのボタンにあるのは新鮮だけど、ボルテほど画面が派手じゃないから地味な感じは否めない。操作感は面白い。押しっぱからの回転はデレステの終点フリックとも弐寺のBSSともまた違う
— 新橋ユウ (@Shinbashim) 2015年12月19日
あんまり楽しくなさそうだな。
とは言え、何回か遊ぶ中でGrafica集めやクオリティの高い音楽、他にない音ゲーシステムに段々とハマっていき、
ミュゼカ しおり 画像 🔎
— 新橋ユウ (@Shinbashim) 2015年12月31日
プレー中のしおりちゃんは音楽ゲームにも関わらず「静かにして」とか言ってきて超かわいいからみんなゲットしような
— 新橋ユウ (@Shinbashim) 2016年8月11日
気が付いたら豚になっていた。
しかし世間的なMUSECAの評価はあまり良くなかった。
ニコ百科の記事がこれだ。
初期版のGraficaはスコアに直結していたため「Graficaを揃えないとハイスコアが出せない上に課金すれば有利になりやすい」ことに技術で勝負してきた音ゲーユーザーの不満が集中。更にガチャに過剰な反応を示した一部のユーザーによる異常なまでのバッシング活動の影響を受け、非常に前評判が悪かった。初期型のシステムも頭を使う仕様でユーザーを選ぶものであり、理解が追い付かないユーザーからは敬遠されてしまった。
テコ入れとして1+1/2を稼働させ、Grafica入手をミッション制にする、システムをなるべくシンプルにするなどしたが既に評判は地に落ちており、半年以上も更新ができない時期もあった。2017年末に最後の公募追加曲をリリースしてからまた更新されない状態が続き、最終的には2018年7月31日をもって更新を終了している。
要するに「カードゲーム×音ゲー」が成立しなかったのだ。
1+1/2という大型アップデートで問題は改善されたものの、稼働初期に「面白くない」というイメージが付いたゲームに人が戻るはずもなく、MUSECAは2018年に更新を終了した。
ところが問題はこの「更新を終了した」という表現。
実はMUSECAは「完全に稼働終了したゲーム」ではない。
細かい話は割愛するが、MUSECAには3通りの末路がある。
- 「ビシバシCHANNEL」(別のゲーム)に改造する
- 最終アップデートをせず稼働を終了する(サービス終了)
- 最終アップデートをしてオンラインでもオフラインでも稼働できるようにする
この③が問題。
③の場合、MUSECAをオフラインで稼働できるようになる。
オフラインならネットワークに繋がないので、ゲーセン側での稼働コストが減るが、コナミのe-amusement(プレーデータ)と通信できないため、これまで遊んだデータを使うことができない。
ただしこの③、オンラインでも稼働し続けることができる。
③の状態でかつオンラインで稼働すれば、これまでのセーブデータが使えて、
集めたGraficaを使う・新しいGraficaを解禁する・曲のスコアを上げる……などができるのだ。
だからこのゲームは実は稼働終了のアナウンスがされていない。
「実質的に稼働終了した」と言われるが、厳密にはまだ終わっていないのだ。
更新はもう二度と来ないだろう。
でもゲームとしては何ら変わることなく遊ぶことができる。
半分死んでいて、半分生きている。
コナミもよくこんな残酷なプランを用意したもんだと感心するが、多くのゲームはネットワークを切断されるし、中にはオフラインでの稼働すらできず正真正銘「死んだ」ゲームもある。*3
それに比べたら良心的だ、と言う人もいる。
さて、僕はMUSECAを遊び続け、通算で300クレジット以上費やしていた。
しかし2018年8月を境に筐体を撤去するゲーセンが相次ぎ、ついに近隣のゲーセンからMUSECAが消えた。
上記の通り3つのプランがあるとは言え、実際は多くのゲーセンが②を選んだのだろう。特に当時はアーケード音ゲー群雄割拠の時代でもあり、ゲーセンは設置コストと床面積に対してかなりシビアになっていた。
無くなった直後は「どこかで見かけたら絶対遊ぼう」と思っていたものの、立ち寄るゲーセンにはことごとくMUSECAがいない。
そして少し足を伸ばして行ける範囲から筐体が消えた時。
もうMUSECAのことは忘れた方がいいんじゃないかと思った。
きっとこの先MUSECAはどんどん消えていく。
筐体を見つけたところで、これまでのデータが使えるオンライン筐体とは限らない。
それどころか、筐体すら無くなって完全に遊べなくなる可能性だってゼロではない。
この先どうせ残らないものに執着してもどうしようもない。
MUSECAは完全に稼働終了したのだ、と自分に言い聞かせるようにした。
ボタンを叩いたり回したりする感触も、フットペダルの感触も、好きだった曲のメロディも、次第に忘れていった。
しおりちゃんのことも忘れていった。
時は流れて2020年。
実は2018年にこんなCDが同人で制作されていた。
【MÚSECAトリビュートアルバム】
— Yu_Asahina / orangentle * Arcaea "Heart Jackin'" (@YuAsahina) 2018年10月21日
MÚSECAトリビュート『A Tribute -One Heart-』の特設サイトを公開しました!
CD 2枚組+GRAPHICA MEMORIAL BOOK 24ページの超豪華仕様!
総勢60名以上の想いを1つのパッケージに。
M3秋にてリリースします。詳しくは特設サイトをご覧ください!https://t.co/ZP39HpDI50
MUSECAに楽曲を提供したYu_Asahinaさんが主催となり、MUSECAに参加した作曲者・イラストレーターによるアルバムが制作されたのだ。
もちろん僕は2018年にこのアルバムを買った。
しかし聴くとまた執着してしまうような気がして、後で聴こう後で聴こうと思っているうちに二年が経ってしまった。
「そういえばこんなアルバムあったな」と思い、ふと聴いてみた。
このアルバムに入っている一部の曲は、作曲者本人の手で意図的にMUSECA収録曲に似せて作られていて、一曲目の「birth」に至ってはMUSECAに収録されている曲そのものだ。
そして5曲目、yasetaさんの「Hi-Fi Railway」を聴いた時に思った。
このゲーム面白かったなぁ、と。
お洒落でかっこいい音とノリの良いリズム。MUSECAに収録されている「Lo-Fi-M」をプレイした時の感触を思い出した。
小気味良い連打、ノリを引き立てるスピンオブジェクト、展開を盛り上げるキックオブジェクト。
そして「Hi-Fi Railway」に「Lo-Fi-M」のメロディが重なった時、MUSECAでしか得られない体験が走馬灯のように思い出された。
と同時に、まだやり残したことあった気がするなぁ……と思った。
まだ育て切れていないGraficaがあったかもしれない。
まだ解禁していないGraficaがあったかもしれない。
そもそもちゃんとしたプレー納めをできていなかった。
幸いにしてMUSECAは半分死んで半分生きている。
多くのゲーセンは筐体を撤去したが、上にも書いた通り、
③アップデートしオンラインでもオフラインでも稼働できるようにする
このプランを選び、オンラインで稼働させているゲーセンもあるはずだ。
公式サイトの「設置店舗一覧」から探せば、コナミと繋がっている(=まだオンライン稼働していてデータが使える)筐体があるかもしれない。
近隣には無いだろうが、関東のどこかにはあるはず。
まだ間に合うはずだ。
そう思って検索すると、
_人人人人人人人_
> 埼玉か茨城 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
*1:本記事の「半分死んでいる」「仮死状態」という表現を不快に思われる方もいるかもしれない。本記事での「生死」はゲームのオンラインサービス提供状況を意味するものであり、その他の意味を含まない。その上で、キュレーター(プレイヤー)として、あえてこの言葉を使うことにご了承頂きたい。
*2:稼働初期のMUSECAはカードの性能によって音ゲーのスコアが左右される仕様で、先に挙げた2つのゲームと同様である。カードをガチャで引くという点も同様。ただしこの仕様は失敗する。後述。
*3:コナミ音ゲーでは「ビートストリーム」が2017年にサービスを終了している。こちらはオフラインでも稼働させることができず、筐体を流用して「ノスタルジア」に改造するか、筐体を撤去するかの二択となり、「ビートストリーム」は二度と遊べなくなった。また、MUSECAと似た状態のコナミ製ゲームに「スティールクロニクル」がある。MUSECA同様に稼働終了宣言はされておらずオンラインサービスを継続しているが、オフラインで稼働させることができず、多くのゲーセンから筐体を撤去されている。